※レビュー部分はネタバレあり
ロビン・ウィリアムズ主演。通常の人の4倍の速さで発育する病気を持つジャックと周囲の人々の交流、そしてジャックの成長を温かい視点で描く。
ロビン・ウィリアムズが少年の知能を持ちながら体は大人という難しい役どころを好演している。ジャックを心から愛している母親にはダイアン・レイン。ジェニファー・ロペスも小学校の教師役で出演していてなかなかの好印象。
この映画の主人公ジャックは難病を患っている。1年たつとジャックには4年が経過していることになるという病気だ。現在10歳のジャックの体は40歳に達していることになる。
両親はジャックを心から愛しているが、その愛情ゆえに、学校に通わせていじめを受けることを恐れ、外に出さず、家庭教師をつけて教育をしていた。
ある日、ジャックは家庭教師の先生から学校の話を聞き、学校に行くことを決意する…。
エンドロールを眺めながら心に残る余韻を味わえる映画『ジャック』。惜しみない人間への賛歌が伝わる感動作。
【映画データ】
ジャック
1996年(1997年日本公開)・アメリカ
監督 フランシス・フォード・コッポラ
出演 ロビン・ウィリアムズ、ダイアン・レイン、ジェニファー・ロペス
映画:ジャック 解説とレビュー
※以下、ネタバレあり
★ジャックの生きた時間
人間って素晴らしいな、と単純に思える、本当に感動した映画でした。
初めて小学校に入学したジャックを、最初は子供ならではの残酷さでモンスター扱いしながら、次第にジャックを受け入れていく友達。本音で接するからこその深い友情が後に生まれることになります。
そしてときに心配をしすぎるほどの深い愛情でジャックを包む両親。折に触れてジャックを導く家庭教師の先生。
人間の命は100年に満たないものです。誰もかれもが必ず迎える死。
その瞬間が訪れたときにその命を計るのは生きた時間の長さではないことは確かです。それは高校の卒業スピーチをする彼の生き生きとした姿をみれば明らかなこと。
見た目は老いても、きっと今のジャックは家で閉じこもって過ごす時間よりもずっと輝いている。
そして、ジャックの卒業スピーチを見守る両親。そこには新しい家族が。
このシーンをみると、2人目の子供をを持つか持たないかで言い争っていた両親の姿、そしてそれを物陰から聞いているジャックの辛そうな姿が思い出されます。
両親もジャックの短い命を壊れ物のように扱うのではなく、その命をジャック自身のものとして彼の自由に預けることにしたのでしょう。
そうすることによって、ジャックの存在した時間が、両親にとって人生をジャックのために費やした時間ではなく、ジャックと共に過ごしたかけがえのない時間として初めて宝となるのです。
★これぞ、映画
映画には複雑でパズル的な脚本や、凝った展開の作品も多くあるのでこういうストレートな感動作は逆に新鮮で心に響きます。
ただ感動させる、それだけではなく、要所要所でコミカルな場面を挟んで観客の笑いを誘い、友達の母親に嘘がバレないかとはらはらさせて観客を引き込むシーンもある。
そして迎えたラストシーンで一気に観る者の心情を高まらせる…最後に誰もがジャックを見守る立場になって、高校を卒業するときのジャックのスピーチに感動せずにはいられません。実にお見事。
ゴッド・ファーザーを撮ったコッポラが監督してるんですよね。観終わった後に気がついてびっくりしました。最後に献辞が出ますが、これは同様の病気で亡くなった監督の子供に捧げられています。 本当に映画はいいなあ。と単純に思える映画でした。
※ジャックの病気について
広義には早老症と呼ばれる。本作では幼少期からの発病事例なのでハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群であると思われる。
先天性の遺伝子異常が原因だが、遺伝ではなく突発性の遺伝子変異が原因といわれる。よって、兄弟そろって発症するとは限らない。
実際には映画のジャックとは異なり、体格は貧弱になり、小人症と同様の発育態様になる。ただし、脳の発育は健常者と変わらない。1年間が10年以上に相当するといわれ、非常に短い平均寿命になる。男児に多く、現在約40名の患者が確認されている。
日本のTV番組でよく取り上げられたアシュリー・へギさんはこの病気を患っていた一人(2009年4月21日逝去)。
成人期以降に発症することの多い早老症にはウェルナー症候群がある。こちらも低身長・低体重などの身体的特徴があり、平均寿命は40〜50歳。世界で1200例が報告されている。