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趣味の問題

映画:趣味の問題 あらすじ
※レビュー部分はネタバレあり

 フランス映画、趣味の問題は微妙な人間の精神構造を描く実に独特な映画。

 ニコラはレストランのウェイター。ガールフレンドのベアトリスや友人たちとアパートで気ままな共同生活をしている。

 ある日、レストランに食事に来た男性二人連れの客。そのうちの一人にニコラは給仕した料理の味見をするように求められる。怪訝に思いながらも、適確に料理の味を表現して見せたニコラは後日、面接に来るようにといわれるのだった。

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 その男性はフレデリック・ドゥラモン。国際的な化粧品会社を経営している大会社の社長だった。
 彼によると、自分の食べられないチーズと海鮮類を見分けられる味見役を探しているという。ニコラは高額の報酬にも魅力を感じ、フレデリックの味見役として採用されることを承諾する。
 
 しかし、その仕事は単なる料理の味見にとどまらなかった。社長の奇妙な要求に応えて「仕事」をこなすうちに、二人はやがて抜き差しならない関係に陥っていく。

趣味の問題


 何気なく見つけたユニークな映画。日本での知名度は低いかもしれません。

 セリフで対人感情をはっきりとさせるのではなく、雰囲気から感情の揺れや動きを読み取らせる人間関係の描き方は見ている方の不安感や焦燥感を煽ります。

 フレデリックの巧みな心理誘導のテクニックはある意味、ホラーより怖い。



【映画データ】
1999年 フランス

フランスコニャック国際ミステリー映画祭グランプリ

監督 ベルナール・ラップ
出演 ジャン・ピエール・ロリ、ベルナール・ジロドー



映画:趣味の問題 解説とレビュー
※以下、ネタバレあり

★本映画の時系列

 本作ではラストシーンでニコラが殺人を犯した後が冒頭にリンクしていて、冒頭はフレデリックを殺したニコラが自宅アパートメントで恋人のベアトリスとともにいる場面です。

 時折はさまれる、事情聴取のシーンは社長フレデリックとニコラの関係を回想しながら供述しているフレデリックの会社関係者の様子です。

★異色の作品と思ったわけ

 この作品が面白いなと思ったのはその扱ったテーマ。

 より深い精神的な関係を求め合った末の悲劇。相手に自分を理解してもらいたい、もっと共感してほしい…その精神的渇望が招いた結末。
 
 恋愛関係ではなく、かといって友情と言うには歪んだ関係性を扱った点がとてもユニークだと思います。

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 結局、社長という地位と権力に恵まれた男がその地位と名声ゆえに、手に入れられない経験や信頼をニコラを通じて手に入れていく関係にあったわけです。

 ニコラがした味見=経験をフレデリックが後追いで経験することでニコラとフレデリックは同じ経験と時間を共有することができます。
 
 そして、フレデリックは彼自身の嗜好や経験を逆にニコラに体験させることで、さらに完全な相互の経験の共有を図ることができます。

 そうしていくうちにいつしか二人はもはや他人ですらなくなっていくはず。そう考えたのは雇い主のフレデリックでした。

趣味の問題


 ニコラは初めからこの仕事が社会常識的に見て普通ではないこと、次第にフレデリックとの関係が尋常ではなくなっていっていることも十分承知していました。

 始めはフレデリックのさせることに戸惑いを感じ、畏怖や怒りすら覚えるニコラがその関係に染まっていくのは、心のどこかに寂しさや満たされないものがあるから。                                                    
 一見、何も不満がないような生活であっても、満たされないのは人間の性。自分を完璧に分かって理解してくれる人間なんてこの世にはいない。
 たとえ、最愛の恋人ベアトリスであってもそうです。

 恋人ですら共有できない究極の時間を共に経験したフレデリックとニコラの関係はもはや相互依存の域。

 精神的に追い詰められたフレデリックとニコラは、お互いを所有し、支配しているという感覚を味わい、完全に分かり合っていて、互いがイコールの存在になっているという錯覚が生まれていました。                     
 そしてその関係をお互いが容認しているうちは良かったのです。そしてその期間は二人ともこの上ない安心感や安定感を感じていました。

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 しかし、社会的には二人の関係は異常なものと映っていました。
 
 フレデリックの側近たちはニコラとの関係に強い懸念を抱いていたことが、時折挟まれる事情聴取のシーンから分かります。

 また、その関係はベアトリスには耐えられないものでしたし、ニコラも初めからフレデリックとの関係が尋常でないことを分かっていました。

 そして、ニコラはついにフレデリックと訣別します。そして、恋人のもとに完全に戻る決意をした…はずでした。                                             そこにかかってくる一本の電話。

 あっという間にニコラにフレデリックとの記憶が戻ってきます。その記憶は、錯覚でしかないとしても、一度手に入れた安息の記憶でした。

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 だから、ニコラはフレデリックを殺したのです。

 ニコラにとって、彼は自分であり、彼が生きている限り、ニコラについて回る影のような存在になっていたからです。

 彼の存在はドラッグのようなもの。

 彼がいる限り、自分は彼の元に戻りたい欲求と闘わなくてはならないのです。
 この葛藤から逃れるにはフレデリックにこの世から消えてもらうしかありませんでした。

 けれども、彼の死はもしかしたら…同時に自分を殺したことになるのかもしれません。

 ともに経験を共有し、共感し合った存在の喪失は失くしたときに初めて分かるもの。

 フレデリックとニコラの関係に至ってはお互いの依存関係は相当深いものであったはずです。

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