※レビュー部分はネタバレあり
ターミネーター2が描くのは、ターミネーター(T800型)とサラ・コナーの死闘から10年後の世界。ジェームズ・キャメロン監督の描くターミネーター2はその高い完成度でシリーズ中必見の映画。
本レビューではターミネーター2 拡張特別編を取り上げる。
ターミネーター3はこちら
サラは核戦争とそれに続くスカイネット(自我を持つコンピューター)の支配する世界の到来を警告し続けていたが、妄想癖のある精神病患者とみなされて、精神病院に収容されていた。
一方、10年前にサラと共に闘ったカイル・リースとの間に生まれた息子ジョン・コナー。
ジョンはサラの入院により、親戚の家に預けられているが、そこに馴染めず、疎外感を感じている。ジョンもまた、サラの警告は妄想であると信じていた。
そんなある日、2体のターミネーターが未来からやってくる。
一つはT1000型ターミネーターで、スカイネットが未来世界において反乱軍のリーダーになるジョン・コナーを抹殺しようと送りこんだものであった。
もう一体は10年前のターミネーターと同型のT800型ターミネーター。
これは、10年前にサラを襲ったターミネーターと同型で、未来世界のジョンがスカイネット側から捕獲し、再プログラムを施して送り込んできたものである。
その任務とは、子供時代のジョンとサラをT1000から守ることだった。
ジョンをT1000の襲撃から救ったT800はその後、サラと合流した。そしてT1000の追撃をかわし、サラとジョン、そしてT800はメキシコに辛くも脱出したのだった。
サラはスカイネットの出現自体を阻止しようと、スカイネット開発をしている技術者を抹殺することを決意する。
その技術者とはサイバーダイン社に勤めるダイソンという男であった。10年前にサラが破壊し、その死闘の現場に放置してきたT800の残骸から研究を進めているという。
果たしてサラたちはスカイネットの開発を阻止し、T1000の襲撃を阻止できるのか。再びターミネーターとの戦いが始まろうとしていた。
ジェームズ・キャメロン監督が『ターミネーター』の続編として製作し、大ヒットとしたSF巨編ターミネーター2。
アクションだけでなく、ストーリーも充実しており、見応えのある作品になっている。
1作目は予算控えめのB級SFだったのが、ターミネーター2は映像・音響などがちょっとリッチな仕上がり。もちろん、初作が今でも根強いファンを得ているのは、それに負けないドラマがあるから。
技術はいずれ進歩して、目新しさは失われる。しかし、人の心に響くものは永遠に変わらないものがある。
【映画紹介】
ターミネーター2 拡張特別編
監督 ジェームズ・キャメロン
出演 アーノルド・シュワルツネッガー,リンダ・ハミルトン,エドワード・ファーロング
アカデミー賞4部門受賞(視覚・音響等)
映画:ターミネーター2 拡張特別編 解説とレビュー
※以下、ネタバレあり
★ターミネーター2で描かれる二つの愛情
サラたちがT1000を破壊し、スカイネットの開発を阻止することで人類の未来を守るというストーリーがメイン。
そして、サラとジョンの親子関係の再生がサイドストーリーとしてターミネーター2の重要性を決定づけています。
ジョンに物ごころがついたころには母親は妄想癖があるとして母親が精神病院に入れられてしまいました。
そんな母親を頼れないジョンは、母親の愛情というものをよく知りません。預けられた親戚の家でも疎外感を感じ、友達と遊ぶ以外には居所がありませんでした。
ジョンの母親に対する複雑な感情と孤独は、一方でサラも感じていて、サラはそんなジョンに対してどのように接し、愛情表現をしたらいいのか戸惑いを感じていました。
そんなジョンとサラの親子の関係は、メキシコへの逃避行、そしてジョンを守るために必死で闘うサラの姿を見るうちに癒されていきます。
サラとジョンははっきりと感情を出し、直接的に対立するわけではありません。ジョンが母親を責めるわけではありませんし、逆にお互いを気遣っている様子がよくわかります。
それでも、どことなくぎこちない感じが最初はありました。
はっきりとセリフでの描写はせず、親子の雰囲気が和らいでいく様子で親子関係の再生を見事に描いていると思います。
なので、親子のドラマと言われるとT2が真っ先に頭に浮かびます。
★友情を超えた感情、そして母との関係の修復。
さらに、ターミネーター2ではもう一つの関係が描かれています。それはジョンとT800の友情です。
10年前にサラが闘った相手と同じ型のT800に対し、疑念のぬぐえないサラと、それとは対照的にT800に次第に親愛の情を抱くジョン。
最初は面白がっているだけであったジョンの感情が次第に変化し、最後はT800に対して涙を流すまでになります。
サラと違って、機械に対してこのような感情を抱くことのできるジョンは、将来スカイネット支配に対抗する反乱軍のリーダーとしての素質があることを示しています。
そして、何よりも、ジョンにとってT800は、自分のわがままを聞いてくれ、甘えることのできる初めての存在でした。
ジョンはT800に対して、遊び仲間に対する友情とは違う親愛の情をを抱き、そして心を開くということを知りました。
母親の愛情を受けた記憶の薄いジョンにとっては母親は遠い存在です。
それに、愛情を受けた記憶がないと、甘えるということを知らず、つい、我を張って素直に自分の気持ちを出すことができなくなります。
母であるサラも、ジョンに対する思いはいろいろだったでしょう。サラはもちろん、ジョンを愛しています。
しかし、長い時間わが子に会えなかったサラはジョンに対する愛情だけでなく、罪悪感も感じていたでしょう。
サラは精神病院に入れられても、自分を押し通す力のある強い女性です。
ですが、それゆえに自分を強く持つため、常に周囲の人間に対して心を許さず、ガードを固めているところがあります。
人類の未来を警告しているのに精神病院に入れられ、病人扱いされる環境にあることを考えれば、至極当然の反応です。
しかし、他人に対する不信感や哀しみで固まった心は容易なことでは解けるものではありません。
サラには息子に対する愛情とともに、息子に会うことを恐れる気持ちもあったでしょう。
幼いうちに引き離された息子に対する罪悪感とどう接していいかわからない不安は、余計に親子の心を離します。
T800がジョンとサラの元にやってきたことで、ジョンは母の予言が真実であることを知りました。
そして、何よりも、T800とサラとの過去を知ることで、自分の出生に関わる真実を知ることができました。
母が人類のため、何よりもジョン自身のために、身を呈して警告を発し続けてきたことを悟ったジョンの母に対する気持ちは大きく変化します。
T800の存在がなければ、いきなり母と会ってもどう接していいか、ジョンもサラもお互い分からずじまいで終わっていたかもしれません。
母と会うと同時にT800と会えたことはジョンにとって幸運な出来事でした。
★ターミネーターの世界観
ターミネーター2をはじめとする『ターミネーター』シリーズで取り上げられる世界観は機械の支配する未来世界と、それに対抗する人間たちという設定で、いまでは珍しくない機械vs人間の世界観です。
『マトリックス』もそれに近いですね。
しかし、それだけではすぐに忘れられてしまい、過去の作品として時間の経過とともに埋没してしまいます。
『ターミネーター』及び『ターミネーター2』がそうではないのは、人間としての普遍的な、自然な愛情を重層的に描きこむことに成功しているからでしょう。
『ターミネーター』ではサラとカイルの男女の愛を、『ターミネーター2』ではサラとジョンの親子の愛をストーリーに織り込みました。
そして、そのストーリー性ゆえに、この映画は単なるSFアクションの域を脱して、長く愛される映画としての地位を得ているのです。
★『ターミネーター2』後の世界(拡張特別編)
『ターミネーター2』には拡張特別編が存在します。それはT1000との死闘後にT800も溶鉱炉に沈んだ後の展開です。
一気に時代は数十年下って、未来の世界が映し出されます。
そこには老いたサラがターミネーターとの闘いを録音している様子。そして、ジョン・コナーが自分の子供たちと遊ぶ姿。
そう、未来は救われました。スカイネットの出現はなく、いつも通りの平和な日常が存在します。そして、サラは人類の未来のために、メッセージを残すのでした。
このエンディングはキャメロン監督のたっての要望により撮られたものです。
公開されなかったのは、続編が困難になるなど商業的な理由によるものでしょう。
この拡張特別編は劇場では日の目を見ずに終わりました。
ターミネーター・シリーズは『ターミネーター3』に続きます。
レビューも続いてターミネーター3をアップしていきます。賛否両論の続編ですが。
追記:アップしました。ターミネーター3はここ