※以下各話のあらすじと各作戦の解説です。
全てネタバレしています。

↑アフガニスタンにて アメリカ軍・軍事情報センター提供
第1話「翼のために」(Currahee)
アメリカの基地で降下兵として厳しい訓練を受け、イギリスのアンブローズ基地に配属されて前線に向かうまでを描くバンド・オブ・ブラザーズの導入部分。
E中隊はパラシュート部隊であるが、降下傘兵は訓練中の事故死も多いうえ、前線でも危険な任務に就くことから特に陸軍精鋭部隊として強化されました。
優秀な志願者を募るために、特別手当が強調されたりもしました。
現在、自衛隊でも降下一回について特別手当が出ます(6650円、第二次世界大戦中は1200円程度)。
それほど落下傘降下には危険が伴うもの。
空挺部隊の急襲部隊としての性質上、着地地点は敵陣の背後や敵陣のど真ん中になるうえ、降下する場所が足場の悪い沼地かも知れないし、岩場や崖の迫る狭い場所かも。
予備傘が開かないかもしれないし、悪天候で雨が降り、風が吹く中の降下かもしれません。着地時の骨折、木や建物に引っかかることによる縊死などの事故も多くありました。
実際、ノルマンディー降下作戦でも多くが戦わずして海に落下して溺死したり、木に引っ掛かって縊死しています(首を吊って窒息死)。
というわけで、日常的にビルの3階から飛び降りるのが苦にならない人なら参加できるかもしれません。

↑イラクアメリカ軍駐留キャンプでのトレーニングの様子. アメリカ軍・軍事情報センター提供
第2話「ノルマンディー降下作戦」(Day of Days)
ついに来たD-DAY。降下作戦が決行される。
イギリスのアンブローズ基地を飛び立ち、フランス・ノルマンディーへ。
【ノルマンディー上陸作戦】
ノルマンディー上陸作戦は 1, 海からの上陸軍と 2, 空からの空挺部隊 の2方面からノルマンディーに上陸する作戦でした。
イージーカンパニーは空挺部隊なのでもちろん空からの上陸部隊。
空挺部隊は海からの上陸部隊に先んじてノルマンディーに降下し、砲台などを破壊してできるだけ上陸部隊の犠牲を少なくするという任務を負っていました。
ところが、降下地点が大きくぶれた上、フランス上空の通過時間が12分と短すぎました。そのため、空挺部隊はバラバラの地点に降下してしまい、合流に苦労しました。
バンド・オブ・ブラザーズでは結構あっさり合流していますが、実際は部隊が四散してしまい、合流できずに作戦実行に移ることが困難だった部隊もあるようです。

↑イラク・バグダッド.ボールを現地の少年にあげようとしているアメリカ駐留軍兵士 アメリカ軍・軍事情報センター提供
第3話「カランタン攻略」(Carentan)
隊員たちが集結してきて、戦車隊の進路確保のためカランタン市街の確保を目指します。市民の歓迎を受け、実際になかなか進軍できないということはしばしばあったようです。
第4話「補充兵」(Replacements)
カランタン攻略後、新たな任務が下されます。
ついに来ました。マーケット・ガーデン作戦。簡単に説明しておきます。
【マーケット・ガーデン作戦】
連合軍の史上最大の失敗といわれる作戦です。(9日に及ぶ作戦の詳細は映画『遠すぎた橋』を参照してください。→ここ マーケット・ガーデン作戦の全容をかみくだいて解説しています。)
オランダ=ドイツ国境沿いの橋3か所に空挺部隊が降下して橋を押さえ、地上部隊が南から北に向かって進撃して前線を形成し、オランダを一気に解放する作戦でした。
これにより、クリスマス前のドイツ降伏が見込めるといわれていました。
さて、イージーカンパニーは一番南部の橋の降下作戦を任されます。
ある意味運が良かった。当時は前線が南にあり、北に行くほど敵陣深くなるため、危険でした。
実際に最北部に降下したイギリス空挺部隊は全滅。これを中心に描いたのが映画『遠すぎた橋』です。
マーケット・ガーデン作戦の中止が決まったのちにイージーカンパニーは彼らの救出に向かうことになります。
それはさておき、イージーカンパニーが確保するように命令を受けた橋のある街で彼らは大歓迎を受けました。
事前情報でもドイツ軍の守備は手薄とのことだったので意気揚々と橋に向かいます。
果たして待ち受けていたのはドイツ軍の攻撃。
たちまち敗色濃厚になります。そして、撤退。初めての敗戦でした。
この回で取り上げられるのは補充兵。旧来の仲間は8割方が負傷・戦死して補充兵が送られてきていました。彼ら補充兵と旧来のメンバーとの関係にご注目。

↑イラク,バグダッドで監視活動中のアメリカ駐留軍 アメリカ軍・軍事情報センター提供
第5話「岐路」(Crossroads)
第5回はトム・ハンクスが監督。この回だけ、時系列をいじっています。昇格したウィンタースの回想が時折混じるという構成です。
ウィンタースは大隊の指揮官になり、前線指揮から離れます。
冒頭ではマーケット・ガーデン作戦の後始末。
マーケット・ガーデン作戦で最北部に降下したうえ、作戦中止で壊滅的被害を受け、撤退がままならないイギリス空挺部隊を救出に行く。
なんとか成功。(なお、イギリス空挺部隊全員は救出できず、残りはドイツ軍に捕虜に取られてしまった。『遠すぎた橋』参照)
5話の残りと6話7話はバルジ作戦。バルジ作戦はナチス=ドイツ軍の最後の大反撃。
ドイツはこれに負けると後がないので大攻勢を仕掛け、ついに連合国の前線を一部で突破します。
簡単にバルジ作戦を解説しましょう。
【バルジ作戦】
作戦内容は第二次大戦初期のフランス進攻作戦の焼き直しです。
フランス=ドイツ国境のアルデンヌの森を電撃突破して連合軍に攻勢をかけるという作戦。情勢を有利にして和平交渉に持ち込みたいヒトラーの思惑による作戦決行でした。
この作戦に対してはナチス=ドイツ幹部からは反対論が強く出ていました。しかし、ヒトラーが押し切ってバルジ作戦決行となったようです。
結果は、当初は成功。連合軍を後退させ、ドイツ軍は進撃できました。しかし、そこから先は力負け。物資と人的資力に勝る連合軍は圧倒的な物量で押し返し、膠着状態にまで押し戻します。
そこから再度連合軍を撃破する力はもうドイツ軍にはありませんでした。結果的にはこれがドイツ軍全体としての最後の総攻撃になりました。
さて、わがイージーカンパニーは休暇中でしたが、ドイツ軍進撃の一報により前線復帰。
バストーニュへ向かいます。バストーニュに向かう途中ですれ違うぼろぼろになった兵士たち。
彼らは真っ先に奇襲をくらってかなり手ひどくドイツ軍にやられた部隊です。
イージーカンパニーは第2陣として戦地に赴くのでその意味ではラッキーでした。休暇で士気も高い中、ドイツ軍との戦闘が始まります。

↑イラク・バグダッド市街掃討作戦中のアメリカ駐留軍 アメリカ軍・軍事情報センター提供
第6話「衛生兵」(Bastogne)
さてさて、高かった士気もどこへやら、だんだんと疲労の色を濃くする兵士たち。
ドイツ軍とは散発的な戦闘。大戦闘でなくても死傷者は出ます。
そのたびに走り回るのは衛生兵。大変な仕事です、体力的にも精神的にも。
そんな衛生兵の一人に焦点をあてて、彼の視点からアルデンヌの森の攻防戦を描きます。
よく、ニュースで「各地で散発的な戦闘が起きており、治安情勢は悪化しています」なんてフレーズが使われますが、こんな感じなんでしょう。
散発的というと軽く聞こえるけれど…。
【衛生兵って?】
一般兵士の中から志願または任命により、応急手当の知識を得て衛生兵になる。軍医とは別物で、実際には医学的知識なんてないも同然の者も多い。医師の資格があれば軍医として後方勤務が可能。
第二次世界大戦中の国際規約によって、衛生兵は武装を許されない代わりに、攻撃は許されないことになっていました。
でも、そんなの理想論!てなわけで、衛生兵は狙い撃ちにされたりして、とても危険な任務でした。(もちろん非武装なんてナンセンス。)
そもそも戦闘中や遠くからの砲撃に区別なんて付きませんしね。
余談ですが、このころには負傷させることをメインに兵器開発がされるようになっています。なぜなら、1名負傷させると負傷者を運ぶために元気な兵士が抜けるので戦力減退を図れるから、死んでしまうよりも負傷の方が好都合。

↑イラク国内,ある都市で民家捜索をする駐留アメリカ軍 アメリカ軍・軍事情報センター提供
第7話「雪原の死闘」(The Breaking Point)
さて、前回は全く戦線が移動しませんでしたが、今回は前進命令が出ます。でもドイツ軍も後がないのでかなりの反撃があるでしょう。
死闘が予想される中、新任のダイク中尉はコネでやってきた実戦経験のないエリート軍人。
ダイク中尉は負傷するのではないかと戦々恐々です。前線に立って銃撃の嵐を浴びるなんてもってのほか。
とてもじゃないが、恐ろしくて前線になんて立っていられません。
しょっちゅう後方に行ってしまい、前線に戻ってこないダイク中尉は困った上官。挙句の果て、戦闘本番でも恐怖で身動きできません。
ついに、ダイク中尉の上官ウィンタース大尉は指揮官交代を命令。
おみごと、バルジ作戦は終了しました。
このなんとも情けない、エール大出身のダイク中尉はこの戦いで実戦経験を積んだことになったのでしょう、この後、ちゃんと昇進。
将軍の補佐官にまでなります。
まあ、人生必ずしも、苦労した者が報われるものではないですね。
第8話「捕虜を捉えろ」(The Last Patrol)
もう終盤です。飽きるくらい長かったバルジ作戦。
一転して終戦のうわさが飛び交うバストーニュ後のイージーカンパニー。
今回のメインキャストはアメリカ国内訓練時代からのメンバー、ジョーンズ少尉。
しかし、旧来メンバーの彼を迎える仲間の目の冷たいこと…。
なんせ、彼は負傷して前線を離れており、あの辛かったバストーニュを経験していないため、かの過酷なバルジ作戦を経験した同僚からは遠い存在になっていました。
補充兵は経験を通して仲間として受け入れられていったことと反対ですね。旧来のメンバーでも経験を共有していない者には連帯感がなくなっている。
ジョーンズ少尉はかつて所属した隊から転属になってしまいますが、そこにやってきたのは士官学校を出たての新任将校。
新任将校として初めて前線に着任した彼は実戦経験を積まないまま、戦争が終わってしまうことに焦りを感じています。
あの無能なダイク中尉もそうですが、昇進のために実戦経験は必須。
じつのところ、そろそろ皆終戦が近いことを感じていて、内心無事に帰国したいという思いが強くなってきています。
そこに飛び込んできたのは、河岸を挟んで睨みあうドイツ軍から捕虜を取る作戦。
ところが、古参の兵士たちはもう生きて帰ることを優先したいと思っていて、作戦の実行を命じられることに不満たらたらです。
一方で、ジョーンズ少尉と新任将校は作戦の参加に乗り気。
トム・ハンクスの息子さんのコリン・ハンクスはそう、この回で登場です。トム・ハンクスもセリフ2つくらいの上級将校役で前半に出ています。

↑イラク国内民家の家宅捜索をするアメリカ駐留軍 アメリカ軍・軍事情報センター提供
第9話「なぜ戦うのか」(Why We Fight)
ようやくドイツ軍の大半が降伏。
この回からイージーカンパニーは本格的な戦闘から解放されます。
戦闘がないとなると部隊の雰囲気ががらりと変わってバンド・オブ・ブラザーズじゃない、別のドラマ見てる気分になってきます。
さて、命じられたのは郊外の森の偵察任務。ドイツ軍の残党がいないか調べてこいと言われて向かった先には…。
第10話「戦いの後で」(Points)
終わりです。ドイツは降伏しました。3年の長きにわたった対ナチス=ドイツ戦線の終結です。
残すは日本のみ…。イージーカンパニーの視線は太平洋戦線に目が向きます。
なぜなら、当時のアメリカは徴兵制で退役は点数制でした。(1973年ベトナム戦争終結とともに徴兵制は廃止。)部隊所属期間が基準に満たず、点数が足りないイージーカンパニー所属兵士は日本への転戦が予定されていたのです。
今のところ、イージーカンパニーはオーストリアに駐留しています。
ヒトラーの別荘を占領し、思い思いにくつろいでいる中で飛び込むドイツ降伏の一報。
そして、待機時間を経たのちの日本の降伏。日本に行く必要はなくなりました。
その後、隊が解隊され、全員が帰国できることに。
あとは、帰国した者たちのその後が語られて長かったバンド・オブ・ブラザーズのドラマもおしまいです。
バンド・オブ・ブラザーズ 解説とレビューはこちら

↑アメリカ空軍.イージーカンパニーは陸軍です. 軍事情報センター提供