※レビュー部分はネタバレあり
「スターダスト」は王道を行くファンタジー・ストーリー。

特に、注目したいのはロバート・デ・ニーロ。スターダストならではの演技を披露してくれる。
空飛ぶ海賊のキャプテンにして女装が好きといういささか海賊としては珍妙な趣味を持つ、憎めないキャプテン・シェイクスピアをデ・ニ―ロが好演していて、かなり面白い。
個人的にはデ・ニーロといえば「タクシー・ドライバー」なのですが、そういった作品とは似ても似つかぬデ・ニ―ロを見ることができます。デ・ニ―ロが好きな方は必見。
他にも、ミシェル・ファイファーが老女から若返る魔女の役を演じていて、かなりの迫力のある演技。
また、クレア・デインズがスターダストのヒロインである"流れ星"という変わった役を、シエナ・ミラーが主人公が憧れる村娘役として出演している。
『解説とレビュー』ではスターダストのあらすじを最初から最後まで再現。スターダストの世界をお楽しみください。
なお、完全にネタバレしていますので未見の方はお気をつけください。

「スターダスト」。それは150年前のすてきな物語。
場所はイギリス、ウォール村。その村に父親と暮らす青年、トリスタンがいた。彼は村で一番の美人と評判の美女、ヴィクトリアに夢中だ。
毎晩のようにトリスタンは花束を持って出かけて行き、彼女の部屋に石を投げる。そうすると、窓が開き、ヴィクトリアが姿を見せてくれるのだ。しかし、その態度はとてもそっけないものだった。
そんなある日、トリスタンとヴィクトリアは流れ星が落ちていくのを目にする。
きらきらと輝いて一直線に落ちていく流れ星。
トリスタンはそれを見て、ヴィクトリアにあの星を必ず持って帰ってくると約束して村を出るのだった。
【映画データ】
2007年・イギリス,アメリカ
スターダスト
監督 マシュー・ヴォーン
原作 ニール・ゲイマン
出演 クレア・デインズ,クレア・デインズ,ミシェル・ファイファー,ロバート・デ・ニーロ,チャーリー・コックス,シエナ・ミラー,ルパート・エヴァレット

映画:スターダスト 解説とレビュー
※以下、ネタバレあり
★これぞ、ファンタジー。- スターダストのあらすじ -
とっても楽しい冒険の物語。たまにはこういう映画もいい。
ロバート・デ・ニーロが出ていると聞いて観た映画だけれど、すっかり浸っていることに気がついた128分でした。大人も楽しめるファンタジー・ストーリーになっていると思います。
まずはどんなお話か、結末まであらすじをご紹介しましょう。

スターダストは150年前の物語。
イギリス、ウォール村には"Wall"=壁というその名の通り、低いけれど、長い長い壁がありました。村人はその壁を越えたことはありません。
その壁の中央にはなぜか、壊れた場所があって、そこには見張り番のおじいさんがひとり。
村に住む青年ダンスタンはその壁の向こうに何があるのか興味しんしんです。
ある夜、おじいさんに話しかけ、「壁の向こうに行きたい」と言いますが、おじいさんはもちろん通してはくれません。
ダンスタンは村に戻るふりをし、おじいさんが安心しかけたところでひょいっと壁の向こうに走りぬけて行ってしまいました。
ダンスタンがそのまま森を走り抜けていくと、何とそこには町があるではありませんか。色とりどりの雑貨が並び、人もたくさんいて、とってもにぎやかです。
ダンスタンが物珍しげに町の市場をうろうろしていると、青いドレスの女性がこちらを見ています。
黄色い馬車の前に立つ彼女になぜか惹かれたダンスタンはその女性に話しかけてみることに。すると、女性が差し出したのは白いマツユキソウをかたどったブローチでした。
「キス一回で売ってあげる」という彼女。自分は王女だ、という彼女をダンスタンは外に誘い出そうとしますが、彼女は足についた魔法の鎖を指さしました。
この鎖はナイフで切ってもまた元通り。何度切っても切れません。
困った顔のダンスタンに彼女は「魔女のサルに捕まってしまって逃げられないの」というのでした。
そのまま彼女と馬車の中で一晩を過ごしたダンスタン。
翌朝には何事もなかったかのように壁を再び乗り越えてウォール村に戻り、そのことをすっかり忘れてしまいました。
しかし、ダンスタンに思いがけない贈り物が。
門番のおじいさんが籐でできたかごを届けに来たのです。おじいさんがいうには、壁の向こうから届いたとのこと。
そのかごをのぞいたダンスタンの目に飛び込んだのは小さな赤ん坊でした。

時は流れて18年後。ダンスタンの赤ちゃんは大きくなり、村の青年へと成長していました。名をトリスタンといい、村の食料品店で働いています。
彼はいま、村一番の美人娘、ヴィクトリアに夢中。毎夜、ヴィクトリアの家に行き、彼女に話しかけますが、彼女はトリスタンには気がなさそう。
ヴィクトリアには今ハンフリーという村の一番の金持ちで美青年の恋人がいて、これといったとりえのないトリスタンには目が向かないのです。
その日の夜も、バラの花束を抱えて窓へ石を投げるトリスタン。ヴィクトリアは姿こそ見せてくれますが、とりつくしまもありません。
そこに恋人のハンフリーがやってきました。トリスタンの姿を見たハンフリーはトリスタンを殴ります。バラの花はあっというまに散らばってしまい、トリスタンは家に逃げ帰って来ました。
ヴィクトリアは「貧しい人にはやさしくして」とハンフリーにいい、笑いながら窓を閉めるのでした。
翌日、食料品店で働いているトリスタン。店が混み始め、長蛇の列のできている昼ごろにヴィクトリアがやってきて、トリスタンに話しかけ、あれこれと注文をしはじめます。
トリスタンは彼女の意のまま。長時間並んで待っている客たちには目もくれず、ヴィクトリアの注文を優先します。
そのうえ、その食料品を家まで届けてほしいというヴィクトリアの頼みを断れないトリスタンはそのまま彼女の荷物を持って店を出て行ってしまいました。
忙しいときに店を空けたトリスタンは食料品店の主人からクビを言い渡されます。
意気消沈し、父親に「クビになった」という報告をしなくては、と鏡に向かってトリスタンが繰り返し練習しているときに父親が帰って来ました。
「ヴィクトリアにも振られた」というトリスタンに父は、「今がだめってことは、将来は望みがあるってことさ」といい、息子を元気づけるのでした。
その夜、再びヴィクトリアの家に向かったトリスタン。
彼女は窓を開けますが、やはり、つまらなそうな様子で2階の窓からトリスタンを見おろしています。
しかし、トリスタンがシャンパンがあるというと、彼女は下に降りて来てくれました。

同じころ、壁の向こう側にあるストームフォールド王国では大変なことが起きようとしていました。老齢の国王がいよいよ死を迎えようとしていたのです。
国王は息子たち3人の王子を呼び寄せて、王位継承者を決めることを宣言しました。
国王には7人の王子と1人の王女がいますが、王女はどうやら行方不明の様子。
国王はかつて12人の兄弟を殺して王位についた経歴の持ち主で、プライマス(第1王子)とターシアス(第3王子)、そして末っ子のセプティマス(第7王子)にも、自分と同じように王位を争わせるつもりです。
残りの4人はどうしたかって?
彼らはすでに王位継承争いに敗れ、殺されてしまいました。
死んだ兄弟は幽霊となって、残りの3人を見ています。彼らも誰が王位につくのか興味しんしん。空中にゆらゆらと浮かびながら、長椅子に並んで座り、あーでもない、こーでもないとおしゃべりをしていました。
さて、国王は第1王子をその場で第7王子に殺させます。
窓から突き落とされた第1王子はたちまち幽霊たちに仲間入り。幽霊になった兄弟は彼を迎え入れ、誰かが王に決まるまで自分たち幽霊は成仏できないんだ、とたった今死んだばかりの兄に説明します。
残された第3王子ターシアスと第7王子セプティマスは王の気まぐれで、今回は殺し合いではなく、王の持つルビーの争奪戦により王位を決めることを知らされます。
王の持つルビーは赤ちゃんのこぶしくらいの大きさがある赤いルビーで、きらきらと輝く素晴らしい宝石。
これを王が天井に向かって投げ上げた、と思ったら、ルビーはそのまま天高く、なんと宇宙まで飛び出して行きました。
そして、星に衝突。宇宙から加速度をつけて戻ってきたルビーは星とともにそのまま流れ星となって地球に戻ってきたのです。

ちょうどそのころ、星空の下でピクニックをしていたトリスタンとヴィクトリア。
ヴィクトリアは恋人のハンフリーがイプスウィッチまで指輪を買いに行き、それを自分にプレゼントしてプロポーズするつもりであることをトリスタンに話していました。
それを聞いたトリスタンは折よく空に現われた大きくてきれいな流れ星を見て、「星を持って帰る」ということをヴィクトリアに約束します。
トリスタンはさっそく、門番のいる壁のところにやってきました。
星が落ちたのはこの壁の向こう側。何としても、壁の向こうに行く必要があります。
門番のおじいさんは父のダンスタンが壁を越えたときと同じ人。
おじいさんはやはり、トリスタンを通してくれません。
そこで、トリスタンは父と同じように、帰ると見せかけて通ろうとしますが、おじいさんは18年前と同じ手にはひっかかりません。
トリスタンは門番のおじいさんに杖で殴られ、追い返されてしまいました。
家に戻り、父のダンスタンに事のてん末を報告すると、父親はあの白いマツユキソウのブローチを息子に手渡し、「母さんがくれたものだ」と告げました。
そして、息子に宛てられた手紙が赤ん坊だった息子とともに届けられたことを教え、その手紙をトリスタンに手渡します。
母からの手紙を開くトリスタン。中には黒いバビロンのろうそくが入っており、"このろうそくを使って母のことを思えば、母のところへ来られる"と書いてありました。
さっそく、父に火をつけてもらったトリスタン。ところが飛んだ先は母のところではありません。
トリスタンは、大きく地面がへこんでいる周りの様子から、ここが星が落ちた場所だと気がつきました。
どうやら、トリスタンの心はヴィクトリアにした「星を持ち帰る」約束を果たす方を優先してしまったようです。
そして、トリスタンは1人の女性がいることに気がつきました。彼女の首もとには赤いルビーのネックレスが。
その女性、イヴェイトンが星であることを知ったトリスタンは彼女に縄をつけ、さっそくヴィクトリアのもとへ連れて帰ろうとするのでした。

一方、流れ星の落ちたちょうどそのころ、ストームフォールドにある魔女の城では3人の魔女が星を眺めていました。
実は、星には若返りの力があり、星を食べると若くよみがえることができるのです。
その力を欲した魔女たちははるか昔に落ちた星を食べつないで生きてきましたが、再び年老いてきており、もう一度星の心臓を食べることが必要でした。
彼女たちは一番下の妹ラミアに残してあった星の残りを食べさせて若返らせます。
ひと口、星を食べるとしわくちゃの老婆の姿は消えて、そこに現れたのは若い女の姿でした。
ラミアは星の心臓をえぐるための紫暗色の薄い、切れ味のいいナイフを選んで、さっそく城を出発しました。400年待った流れ星。なんとしても捕まえなくてはなりません。
途中、農家の軒先にいたヤギと荷車を奪い、農家の青年もヤギに変えて2頭に荷車を引かせ、ラミアは160km離れた星が落ちた場所に向かいました。
ところが、向かった先には星の姿はなく、ラミアは星に逃げられたことを知ります。
城にいる姉たちに星の行き先を魔法で探らせると、どうやら、間もなく星はラミアのいる場所に向かってくることが分かりました。
それならそうと、ラミアは道沿いに宿屋を魔法で出現させ、星を待ち伏せすることにします。
ヤギ2頭を人間にし、元からヤギだった男は宿屋の主人として、ヤギにされていた農家の青年は女に変えて宿屋の娘にしてしまいました。
ラミアの魔法はとても便利なのですが、魔法を使えば使うほど、ラミアの外見は衰えていきます。もう、手が元の老婆の手にもどりかけていました。

さて、魔女が流れ星を追い、トリスタンが流れ星イヴェイトンを村に連れ帰ろうとする中、ストームフォールド王国の王子たちも必死です。
お城の中では司教が第7王子セプティマスを毒殺しようとして失敗。自分が毒を飲んで死んでしまいました。
第7王子セプティマスと第3王子ターシアスはそれぞれ星を探しに出かけることにします。
一方のトリスタン。休憩することにしたトリスタンはイヴェイトンが逃げないように木にロープを縛りつけておきました。
しかし、トリスタンがいないうちに森からユニコーンが現われて、イヴェイトンを助け出してしまいました。
彼女はユニコーンに乗って魔女が宿屋を構える街角にまでやってきました。ラミアはすかさず、イヴェイトンをユニコーンから降ろして、宿屋の中に案内してしまいました。
イヴェイトンに逃げられたトリスタン。
途方に暮れているところ、空から月が、イヴェイトンを守るため、馬車に乗りなさいと語りかけてきます。
その言葉通り、道を通りかかる馬車に飛び乗ろうとするトリスタン。
そして失敗。
急停車した馬車からは人が飛び出てきました。なんたる偶然か、この馬車は第3王子ターシアスのもの。
馬車に乗っているのは先に死んだ王子たちの幽霊です。
幽霊たちは眠っているところを起こされて、びっくり。
ターシアスはトリスタンが第7王子セプティマスの手の者ではないことが分かると馬車に乗せてくれました。

彼らがたどり着いたのはやはり街筋にあるラミアの宿屋。
トリスタンに馬を納屋につながせている間、第3王子ターシアスは宿の中に入っていきます。
しかし、誰の応答もないので、そのまま風呂に入ってしまいました。
そこに現れたラミアは第3王子ターシアスののどをかっ切って殺してしまいます。
第3王子ターシアスも見事、兄弟たち幽霊の仲間入り。
入浴中だったので、裸のまま幽霊になったターシアスはどこか恥ずかしそうな様子。幽霊たちは第3王子ターシアスを応援していたので、彼が仲間になったことにがっかりしていました。
一方、トリスタンはイヴェイトンを見つけ、魔女の手から守ろうとします。
追い詰められたところをユニコーンが助けてくれますが、ユニコーンはあえなく魔女に焼かれてしまいました。
万策窮したトリスタンは母がくれたあのバビロンのろうそくを取り出します。
火をつけ、「故郷を思って!」とイヴェイトンに叫ぶトリスタン。

飛んだ先は何と雲の上。
トリスタンは故郷ウォール村を考えましたが、イヴェイトンが考えた故郷は宇宙。
2人がバラバラだったので、ちょうど中間をとって、雲の上。
がっかりする2人。どうしたものかと雲に乗ってふわふわと空を漂っていると、上から網が投げかけられ、2人は身動きできなくなってしまいました。
やってきたのは空飛ぶ海賊船。
2人は船に乗せられ、縛りあげられて船倉に入れられてしまいます。
船倉に来たのは船長のキャプテン・シェイクスピア。
彼は怖そうな顔で、声を荒げ、2人を脅しつけます。それを窓からこっそりのぞく部下の海賊たち。
トリスタンはイヴェイトンを自分の妻だと言ってかばい、キャプテン・シェイクスピアに故郷イングランドのウォール村に帰りたいと要求します。
イギリスと聞いたとたん、キャプテン・シェイクスピアはトリスタンを海に投げ込んでしまいました。
大騒ぎする部下の海賊たち。
キャプテンはイヴェイトンを船長室に連れてこさせ、部下の海賊たちを部屋から閉め出しました。
驚いたのはイヴェイトン。
部屋にはトリスタンがいるではありませんか。
キャプテン・シェイクスピアはイギリスの話が聞きたくてしかたがなかったようです。
2人に服とドレスを与え、自分が、海賊の船長らしく、恐怖の対象として伝説を作り、演じてきたことに疲れたと語るのでした。
ところで、キャプテン・シェイクスピアの商売は電気の売買。
顔見知りの商人のところに行って、1万ボルトを200ドルで売ることに成功します。
目ざとい商人はイヴェイトンを見つけ、「星はカネになるぞ」とキャプテン・シェイクスピアにささやくのでした。

一方、地上の世界。第7王子セプティマスは魔女の宿屋があったところにたどり着きますが、湯船につかった第3王子ターシアスの死体があるだけ。
湯船の中を手下に探らせますが、ルビーはありません。
しかし、セプティマスは魔女にヤギにされていた農家の青年がいることに気が付きました。
そして、彼から魔女が星の心臓を狙っていること、星の心臓を食べると若返ることを聞き出しました。
セプティマスは、星を捕えてルビーも手に入れれば、永遠の命と王国の両方が手に入るとほくそ笑むのでした。

さて、再び空の上の空飛ぶ海賊船。
キャプテン・シェイクスピアは船上でダンスパーティを催します。
トリスタンやイヴェイトンが楽しそうに踊り、海賊たちも思い思いに楽しんでいました。
その後、キャプテン・シェイクスピアじきじきの操縦により、かなり危うげですがなんとか地上の海に着水。
陸まで2人を送り届けてくれました。そして、キャプテンはトリスタンにひそひそと何やら耳打ちをします。
あまりに優しいキャプテン・シェイクスピアの様子に仲間の海賊たちはそわそわ。
副船長が咳払いをしてキャプテンに知らせ、慌てていつも通りの怖そうな様子を見せるキャプテンなのでした。
キャプテンと別れて、地上に戻ったトリスタンとイヴェイトンは道を故郷に向かって歩き始めますが、とにかく遠い。
そこで、通りかかった黄色い馬車に乗せてもらうことにします。
馬車を走らせていたのは魔女サル。トリスタンの母親を監禁していたあの魔女でした。
サルは「トリスタンのつけている白いマツユキソウのブローチと引換えならば乗せてやる」、といいます。
「いいよ」といって母のマツユキソウを手渡すトリスタン。
途端に魔女サルはトリスタンをネズミに変えてしまいました。母のマツユキソウには身を守る力があったのです。
ネズミにされたトリスタンはかごに入れられ、荷台に積み込まれます。
イヴェイトンはサルに飛びついて文句を言いますが、サルにはイヴェイトンが見えない様子。
イヴェイトンは馬車の荷台に乗り込み、ネズミになったトリスタンにチーズを与えながら、トリスタンへの愛を語るのでした。

一方、魔女のラミア。彼女は見失った星の居場所を探して商人の元にたどり着きます。
彼からトリスタンたちが故郷ウォール村にむかったことを聞き出し、おしゃべりな商人の声をカエルの鳴き声に変えてしまいました。
そして、ラミアはウォール村に向かいます。
次にやってきたのは第7王子セプティマス。
彼はカエルの鳴き声しか出せない商人に怒って彼を殺し、キャプテン・シェイクスピアの元に向かいました。
トリスタンたちを降ろしたまま、地上に停泊している海賊船に第7王子セプティマスは部下とともに乗り込んでいきます。
海賊の仲間たちが応戦する中、セプティマスはキャプテン・シェイクスピアの元へ。
キャプテン・シェイクスピアの趣味は実は女装。
今日もお楽しみの真っ最中で、白いドレスに羽飾りのついたピンクの扇子をもち、楽しげに腰を振りながらダンスの真っ最中でした。
そこに踏み込んだセプティマス。びっくりしているキャプテン・シェイクスピアを捕え、トリスタンらの居場所を聞きだそうと脅迫します。
そこに踏み込んできたのは仲間の海賊たち。
キャプテン・シェイクスピアは助け出されますが、趣味が海賊たちにばれてしまいました。
ところが、海賊たちは案外平静。かれらはとっくに船長の趣味を知っていたのです。
「とりあえず、部屋から出てってくれ」というキャプテン・シェイクスピアでした。

一方、ネズミにされたトリスタン。
魔女サルはウォール村にほど近いストームフォールド王国の町に着くと、彼をおろして魔法を解いてくれました。
人間に戻ったトリスタンは町の宿屋にイヴェイトンとともに泊まります。
そして、「馬車の中での話は本当かい?」とたずねるトリスタン。
イヴェイトンは「まさか、ネズミにされたトリスタンに聞こえているとは思わなかった」「だってチーズ食べてたじゃない! 」といってあわてますが、トリスタンを愛するイヴェイトンの気持ちは本当でした。
トリスタンは、「キャプテン・シェイクスピアの秘密の話は"真実の愛は目の前にある"ということだったんだ」、とイヴェイトンに告げ、その夜、2人は初めて結ばれます。
翌朝、朝早くに起き出したトリスタンは、まだ眠っているイヴェイトンの髪の毛を少し切りとります。
それをハンカチに包み、宿屋の主人にイヴェイトンへの伝言を頼んでから、トリスタンはウォール村に向かいました。
ヴィクトリアを呼び出し、ハンカチに包んだ髪を「星の一部だよ」と言って手渡します。
それを開いたヴィクトリア。
中に入っていたのは灰でした。
ヴィクトリアは「ただの星くず(スターダスト)じゃない!」そう言って怒ります。
トリスタンはそれを見て、ウォール村にイヴェイトンがくると灰になってしまうことに気がつきました。
慌てて、ストームフォールド王国のイヴェイトンのところに戻ろうと走り出すトリスタン。

一方、イヴェイトンは朝起きるとトリスタンの姿がないことに気が付き、宿屋の主人から「ヴィクトリアのところに行く、真実の愛を見つけたから」というトリスタンの伝言を聞きます。
このニュアンスの違う伝言を受け取ったイヴェイトンはトリスタンが自分を捨て、ヴィクトリアのところに戻ってしまったのだと勘違い。
彼を追ってウォール村との境へ向かっていました。
イヴェイトンは途中、ストームフォールド王国の市場を通り抜け、そのときにトリスタンの母の目の前を走り抜けていきました。
母ウーナはイヴェイトンに壁を越えたら灰になることを知らせようと、自分を捕えていた魔女サルを馬車に閉じ込め、馬車を飛ばしてイヴェイトンを追ってきました。
ぎりぎりのところでウーナはイヴェイトンに追いつき、彼女を何とか引きとめます。
しかし、そこに現れたのは魔女のラミア。
ついにラミアは星に追いついたのでした。
ラミアはイヴェイトンとウーナの2人とも捕まえて馬車に押し込み、魔女サルを殺して自分の城へと逃げ去りました。

トリスタンが壁にやってくると、すでにとき遅し。
門番のおじいさんは「ウォール村の方からだけじゃなく、ストームフォールド王国の方からも何やらやって来るというのではもう、やっていられない」とぶつくさいいながらどこかへ去って行ってしまいました。
そこで、トリスタンは難なく壁をこえ、魔女サルの馬車からサルに奪われた白いマツユキソウを回収し、魔女ラミアの後を馬を飛ばして追います。
そしてその直後にやってきた第7王子セプティマス。かれは魔女サルが魔法の戦いで敗れた痕跡を見て、魔女ラミアに先を越されたことに気が付き、やはりラミアの後を追って馬を駆けて行きました。
魔女の馬車のわだちのあとをつけてきたトリスタン。そこにそびえたつのは魔女の城でした。
トリスタンが中を覗き込んでいると、後ろからナイフが突きつけられます。
第7王子セプティマスが追い付いてきたのです。「協力しよう」、という王子セプティマスにトリスタンは同意し、2人で魔女の城に突入しました。
たちまち魔女たちと激しい戦いになります。トリスタンはそのとき、初めて母ウーナと出会いました。
2人は物陰に隠れ、王子セプティマスの戦いを見守ります。

もちろん、兄弟の王子の幽霊たちもこの戦いを見ていました。王子は当初優勢でしたが、魔女ラミアは一枚上手。
魔術を施した小さな土人形の手足を折ったり曲げたりして王子の動きをラミアがコントロールしてしまいます。最後にはラミアが人形を水の中に投げ込み、王子は溺死してしまいました。
トリスタンは母と隠れていましたが、「男らしく戦うのよ」と母に勇気づけられ、トリスタンは魔女に戦いを挑みます。
まず、魔女たちが閉じ込めていた動物たちを解き放ち、オオカミに姉の魔女を喰い殺させました。
そして、残るラミアに迫ります。
トリスタンはラミアを追い詰めますが、そこでラミアが「姉が殺されて、この先、ひとりで生きるつもりはない。もうイヴェイトンを連れて行って」と言いだすではありませんか。
トリスタンは半信半疑、イヴェイトンを連れて逃げ出しました。
しかし、玄関に達すると思われた瞬間、バタンと締まるドア、続いて窓が次々に砕け散り、ガラスの破片が四方八方に飛散してトリスタンとイヴェイトンを襲います。
最後の決戦。見事にトリスタンはラミアをやっつけることに成功しました。

イヴェイトンを守りきり、イヴェイトンが身に着けていた王位継承者の証であるルビーを手にしたのはトリスタンでした。
そして、王女ウーナの息子であるトリスタンは王家の血を引く者。
彼はストームフォールド王国の王位継承者となることが決まったのです。
そして、そのときまで戦いを見守っていた幽霊たちは次々に天界に召されて行きました。
トリスタンとイヴェイトンはストームフォールド王国の王位を継ぎ、国王と女王になりました。
すばらしい、豪勢で華やかな戴冠式には父ダンスタンや母ウーナ、空飛ぶ海賊キャプテン・シェイクスピアにかつての憧れの人、ヴィクトリアと恋人ハンフリーの姿も見えます。
皆に祝福され、歓迎されたトリスタンはストームフォールド王国を統治することになったのでした。
その後のトリスタンとイヴェイトンがどうしたか?
夫婦は我が子の成長を見届けた後、あの、母ウーナがくれたのと同じ、バビロンのろうそくを使って空に飛び立ちました。
彼らは光り輝く2つの星になったのです。
今も輝きつづける2つの星はトリスタンとイヴェイトン。ずっとずっと永遠に輝いて、地上の王国を見守っています。

★とにかく幸せな物語。
トリスタンという村の一青年が冒険を通して次第に成長し、真の愛と幸せを手に入れる絵にかいたようなファンタジスティックストーリー。
トリスタンは最初はとても頼りなくて、ヴィクトリアの恋人ハンフリーとけんかしても負けるし、門番の97歳のおじいさんとけんかしても負けてしまうくらい弱かった青年。
ヴィクトリアは美人だけれど、貧乏なトリスタンを馬鹿にしていて、贈り物やシャンパンを持って行かないと、トリスタンなどは相手にしてくれない。恋人は村一番の金持ちで美青年のハンフリー。
ところが、トリスタンはヴィクトリアにいいようにされても、それに気がつきません。
流れ星を探しに行き、イヴェイトンに出会っても、彼女をただのヴィクトリアへのプレゼントとしか思っていません。
それでも、イヴェイトンから、直接に彼女の真剣な気持ちを聞いたトリスタンはイヴェイトンの愛こそが真の愛だということに気が付いていきます。
「真実の愛」が何かについて、イヴェイトンはトリスタンにこう語っていました。「愛は純粋なものよ」、と。
イヴェイトンはルビーが飛んできて、地上に落ちてくるまで、空でひとり輝く星でした。
空から、何世紀もの間、数え切れないほどの人間の争いや戦争、憎しみや悲しみを見てきました。
そして、イヴェイトンは同時に、人間の愛も見てきていました。

「愛」こそは人間の持つ素晴らしいもの。空に輝く星ですら手に入れられない、温かくて、いとしいもの。
イヴェイトンはトリスタンへの愛をねずみにされたトリスタンに向かって語りかけ、最後に「私の心をあげる」と言います。
トリスタンのヴィクトリアへの「愛」は常にモノが付きまとう愛でした。
彼女を呼ぶときにはいつも花束をプレゼントする恋人のハンフリーに対抗するため、必ず赤いバラの花を一ダースも抱えて行きます。
また、ピクニックに誘うため、彼女の歓心を引こうと、なけなしの金をはたいてシャンパンを持ち出しました。
さらに、ヴィクトリアは「ハンフリーがプロポーズのため、指輪を遠くまで買いに行くのよ」と自慢します。
彼女はトリスタンにはハンフリーにとても張りあえないことを見越していました。
トリスタンはハンフリーにお金では勝てないため、「流れ星を持ち帰る」とヴィクトリアに約束しました。
幾多の困難を乗り越えて、本当に流れ星を持ち帰ったトリスタン。
ところが、星はスターダストに。イヴェイトンの髪は灰になっていました。

このシーンはヴィクトリアの愛に対する考え方が本当によく現れているシーン。
彼女はまず、キャプテン・シェイクスピアのおかげで、ずいぶんとあかぬけて、外見が良くなったトリスタンに今までとは明らかに違う態度を見せます。
喜びの声をあげ、トリスタンに抱きつき、キスをしようとするヴィクトリア。
ところが、贈り物を受け取り、中身がスターダストだと知ると途端に態度が豹変し、トリスタンを責め立てます。
ヴィクトリアにとって、愛は何か形のあるもの。
彼女は本当に星を持ち帰り、約束の日を守ろうとしたトリスタンのその忠実さを評価しません。
彼女にとっては「自分が相手から何を得られるか」、ということが一番大事。
ヴィクトリアの愛はとても物質的で、相手に対して、形のあるものを自分に捧げるように求めてきます。
しかしイヴェイトンの愛は違う。イヴェイトンが捧げ、トリスタンに求めたのは心からの愛。
この点で、イヴェイトンの愛とヴィクトリアの愛は対象的なのです。

★約束を守る、ひとつのことをやり通す。
トリスタンはとにかく正直でまっすぐな性格。
ヴィクトリアに冷たくされても決してあきらめず、毎晩、彼女のもとに通います。
仕事でさえ、ヴィクトリアの次。彼女のためなら仕事も放り出し、結局はクビになってしまいました。
トリスタンは、イヴェイトンとの真実の愛を見つけたあとも、ヴィクトリアとの約束を守ろうとします。
約束の日に遅れまいと早々にイヴェイトンのもとを抜け出し、ヴィクトリアの家まで行って流れ星を届けます。
しかし、その流れ星がスターダストになっていました。
仮に、約束に遅れて、イヴェイトンとトリスタンが一緒にウォール村に来ていたらイヴェイトンは灰になってしまうところでした。
トリスタンが約束を忠実に守ったからイヴェイトンの命は救われました。
また、トリスタンは故郷の村に星を持ち帰る、そのことのために、さまざまな危険にさらされますが、すべてを乗り越えてきました。
約束を守ること。そして、一つのことをやり通そうとする意思と行動力。忘れたくない人間のちからです。

★アンチ・ファンタジー
人間としてこの世に生まれ、10年も生きていれば、世の中はとてもファンタジスティックには回っていないことが分かってきます。
全てが正義ではないし、不合理なことの方が通ることもある。
「本当に、それでいいのか?」と疑問に思うことも少なくない。
現実が見えてくると、人間は夢や理想を見なくなってきます。
ファンタジーはウソ八百。世の中には素敵な王子様も、美しい王女様もいない。火を吹く竜もいなければ、目を見張るように立派な大きなお城もありません。
ファンタジーが好きだった幼いころはパン屋さんやサッカー選手、花屋さんや宇宙飛行士になりたい、そう言っていた子供たちが大きくなるとそうではなくなる。
それが人間の成長というもの。
これは、マイナスに成長するということではありません。

自分を知り、社会の仕組みがどうなっているのかを知る過程で、自分の人生を考えるから夢は変化していくのです。
夢が"変化した"、ならいいのですが、夢を現実に合わせて小さく"削った"という記憶があると少し哀しくなるかもしれません。
それでも"夢を見る"ことのできる人間は素晴らしいと思いませんか?
今そのときを生きるのみならず、夢を見、想像することのできる人間は豊かです。
ああだったらこうだったら、ああしたいこうしたい、という夢の世界を頭の中で想像できる人間に生まれることができたことは喜びです。
もし、今何をすべきなのか、行き場を失ったり、進むべき道が見えなくなったら、かつて自分が思い描いたものがどこにあるかを思い出せばいい。
そうすれば見えなかったものが見えてくるときもきっとあります。
どうせなら、人間に生まれたことを楽しみましょう。
夢を見ることを忘れたならば、また「スターダスト」を思い出して。
「スターダスト」は大人になった人間にもまた、「夢の見かた」を教えてくれるかもしれません。
