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ストレイト・ストーリー

映画:ストレイト・ストーリー あらすじ
※レビュー部分はネタバレあり

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 ストレイト・ストーリー。タイトル通りのシンプルな映画。難解かつ不可解な映画の得意なデヴィッド・リンチ監督にしては、「普通」なストーリーなのが逆に新鮮。

 主役のアルヴィンを演じたリチャード・ファーンズワースはストレイト・ストーリーで主演男優賞にノミネート。そしてストレイト・ストーリー公開の翌年には拳銃自殺により亡くなりました。

 アイオワ州ローレンスに住むアルヴィン・ストレイトは70歳を超える老人で、娘のローズとともに暮らしている。彼はもともと体が思うように動かなくなってきていたのだが、ある日、ついに転倒してしまい、病院に運び込まれる事態に。それ以来杖を2本使って歩くようになっていた。

ある日、ローズは電話でアルヴィンの兄が脳卒中で倒れたという知らせを受ける。

 アルヴィンと兄ライルは長いこと音信不通で、二人はこの数十年は顔も合わせていない仲。ローズはアルヴィンにどうするか尋ねるが、彼は何も言わない。しかし、数日後、アルヴィンは驚くべき決意をローズに告げる。「兄に会いに行くことにする」、と。

 アルヴィンは杖なしでは歩けないほどなので、車の運転はおろか、バスにも乗ることも難しいとローズは思っていた。しかし、そんな彼女の心配もよそに、なんとアルヴィンは芝刈り機で560キロ余り離れたウィスコンシン州マウント・ザイオンまで行くと言い出す。



【映画データ】
ストレイト・ストーリー
1999年・アメリカ,フランス
監督 デヴィッド・リンチ
出演 リチャード・ファーンズワース,シシー・スペイセク,ハリー・ディーン・スタントン



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映画:ストレイト・ストーリー 解説とレビュー
※以下、ネタバレあり

★あらすじ -アルヴィンの道程と出会った人々-

 ローズは反対しながらもソーセージを買い込み、準備を手伝う。そしてアルヴィンは出発するが、すぐにエンジンが故障。町に戻ってくる。中古のトラクターを購入し、すぐに再出発。

 最初にあったのは家出したヒッチハイカーの少女。彼女は妊娠5カ月で、家族にそのことを言えずに家を出たという。アルヴィンは彼女に「家族は心配しているぞ」、と言い、家族というものは寄り集まった小枝の束のように、パキリと折れることはないものだ、と語る。

 翌日の朝、彼女の姿はなく、代わりに木枝の束が束ねられて置いてあった。

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 次に出会ったのは芝刈り機でゆっくり進むアルヴィンの横を自転車で走り抜けていく若者の集団。彼らのテント地に夜になって合流したアルヴィンは、年寄りの一番つらいこと、として「若いころを忘れられないこと」、そして、いいこととして、「正しいものとそうでないものを見分けられるようになったこと」だと告げる。

 さらに進むアルヴィン。今度はエンジンが再び故障。坂を転がり落ちるようにして町に入り、そこで農機具メーカーに勤務していた男性に助けられる。彼の家の庭でキャンプしながら、修理を待つ。

 待っている間に同い年の男性がやってきて飲みに誘う。町の酒場で酒を飲みながらかつて従軍した戦争の記憶を話す二人。どうしても忘れられない戦争の記憶は二人の心にいまだ残る傷でもあった。

 トラクターを修理したのは双子の兄弟。喧嘩ばかりの彼らに、アルヴィンは散々値切った末、年の近い兄弟と言うものは本当にお互いのことが分かりあえるありがたい存在なのだという。顔を見合せる双子。

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 宿泊先の男性にも礼をいい、早朝に出発。彼はカーテンの陰からそっと見送っていた。

 兄の家の近くまであと少しというところまで来たアルヴィンは教会の墓地の近くで野宿する。そのとき、牧師が出てきてアルヴィンの焚火の近くに座る。話をするうち、牧師が病院で運び込まれた兄ライルの姿を見かけ、話をしたとアルヴィンに言う。兄は自分の教区民だと。アルヴィンは無事かどうか尋ねるが、牧師はその後は会っていないので知らない、という。

 ここまでくればもう少し。酒場に立ち寄り、戦争後に復員してから酒びたりになってその後断酒して以来一滴も飲んでいなかったビールを飲む。ミラーのライトを指定し、満足そうに飲むアルヴィン。

 酒場のマスターに教わった道を進んでいくと、後ろから大型トラクターがやってきて、最後の道順を聞く。大型トラクターに先導されて、アルヴィンの小さなトラクターはついに兄ライルの家にたどり着く。

 兄の名をよぶアルヴィン。しばらく応答がなかったが、やがて出て来たのは紛れもなく年老いた兄の姿だった。脳卒中の後遺症で歩行器に頼って歩く兄の姿に感極まるアルヴィン。やがて夜が更け、兄弟は揃って星空を眺めるのだった。

 アルヴィンが家を出てから、6週間が過ぎ去っていた。

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★家族、兄弟、そして愛。

 とにかく、自分の力でたどり着くことに執念を燃やし、兄の元にたどり着くアルヴィン。彼の頑固さはしかし、道中で出会った多くの人を勇気づけ、人生に対する考え方をちょっとだけ変えました。

 彼を見ていて誰もが思うのは家族への気持ち。家出した少女は家族に妊娠を責められるのが嫌で家出したわけですが、アルヴィンは妊娠したことよりも、わが子が家出したことの方が心配になるもんさ、といって少女を諭します。

 彼女はアルヴィンが起きた夜明けにはすでにいなくなっていましたが、家に戻る決意を固めたのでしょう。あとに残されていた小枝の束がそれを表しています。細い木の枝も、束にされたら折れることはない。少女の折れそうな心も、きっと家族は支えてくれるはず。アルヴィンの心は少女に伝わったようです。

 言い争う修理工の双子には年の近い兄妹は宝だと言うアルヴィン。誰だって、家族が大切、兄弟が大事、なんていうことは他人に言われなくても分かっています。少なくとも多くの人は分かっているつもりなのです。

 しかし、ずっと近くにいると見失ってしまう。"本当に大切なものは目には見えないもの"などといいますが、家族というものはまさにそれです。実際にもアルヴィンだって、兄と酷い仲違いをして何十年と音信不通だったのです。何が原因だったのか、そのままアルヴィンと兄は別々の人生を歩み、いつしか数十年。あんなに仲の良かった農場育ちの兄弟でも、お互いを見失ってしまうことがかつて、ありました。

 時折映し出される美しい星空。満天の星が空に輝いています。かつて兄と見たあの美しい星空は年月を経た今も変わらずそこにある。今、アルヴィンの見る空も、兄の観る空も同じ空。

 大きな時間の流れの中で、数十年の時の流れは一瞬にもならない。宇宙から地球を眺めれば、この小さな青い星の上にいるひとりひとりの人間はとても小さい存在。昔のいざこざなんて、問題にもならない、ささいなことではありませんか。それよりも、もっと大事なものがあります。

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 人間がこの世に存在して良かったと思えるのはなぜ ?

 ただ、この地球に「いる」だけではなくて、意味があって、そこで生きていること。人の優しさや愛情はその人がただそこにいるというだけではなく、そこに存在する意義があることを教えてくれる。人の優しさを受けたときに人は優しい気持ちになれる。そして、相手から愛情を受けていると感じたときに、自分がそこにいるということの本当の意味を理解する。その相手は家族でも恋人でも友人でも。誰だっていいでしょう。

 人間と人間の間の「絆」は目には見えないけれど、"本当に大切なもの"。お金で買えるものではないし、急に欲しいと思っても手に入るものではありません。けれど、一度芽生えた「絆」はずっと残るもの。ちょっとした行き違いや、けんかをすることがあって、疎遠になってしまったとしても、それでまったく絆がなくなってしまうわけではありません。アルヴィンの場合は、兄との「絆」をもう一度、取り戻す決意をしました。

 年の近い、仲の良かった兄。すっかり疎遠になってしまったけれど、かつての懐かしい思い出がアルヴィンを兄のもとへと向かわせました。そして、やっとのことでたどり着いた兄の家。ほどなく出て来た兄は年こそとっているにしろ、思いがけない弟の訪問に対する驚きと、かつてと変わらない優しさをもって迎えに出てくれました。年月は2人の間の愛情を消し去ってはいなかったのです。むしろ、

 年月は兄弟の心を穏やかにして、家族への愛と家族がいることへの感謝の念を生みだしていました。兄と弟がその夜に見た星空は昔と変わらない輝きをもって2人を迎えてくれたことでしょう。

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★アルヴィンの秘密。

 アルヴィンは第2次世界大戦に従軍していました。途中、トラクターの故障で立ち寄った町で、同年の老人と共に酒場で話しているときにアルヴィンは自分の秘密をその老人に打ち明けます。

 アルヴィンは狙撃兵でした。戦争も末期、ドイツ軍には少年兵も多くなってきており、年若い小柄な兵士も多く戦場にいました。
 そんな状況下、アルヴィンの部隊には小柄な兵士が一人いました。彼は優秀な斥候兵でした。アルヴィンは戦闘のごたごたのなか、彼が斥候に出ているとは知らず、その兵士をドイツ軍兵士だと思い込んで狙撃してしまいます。

 戦闘ののちに見つかった射殺死体。部隊の仲間は彼がドイツ軍に射殺されたと思いましたが、アルヴィンだけは自分が撃ち殺したことを分かっていました。「今も戦友たちはドイツ軍に射殺されたと思っている」とアルヴィンは語ります。

 アルヴィンは顔見知りでもない、初めて知り合ったばかりのこの老人に秘密を打ち明けました。それは、この老人が昔の戦争の記憶に苦しんでいたからです。この老人は戦争が終わって数十年がたっても、いまだ、目の前で爆死した戦友たちのことが忘れられずに苦しんでいます。彼はその苦しみを打ち明けられる相手がいないことにも悩んでいました。そんな中にひょっこりやってきた同年代の老人。

 彼はさっそくアルヴィンを誘い、打ち明け話をします。アルヴィンは彼の苦しみがよくわかりました。なぜなら、彼も戦後、復員してからアルコール依存になり、酒がなくては生きていけないほど苦しんだから。

 同じ傷を持つ者として、アルヴィンは自分の秘密をこの老人と共有することで、彼の苦しみを和らげてやろうとしたのでした。アルヴィンとの間に生まれた絆です。人の優しさや共感は人間の心を和らげ、苦しみを癒してくれる。絆が生まれるとき、人の心は安心感を得て、人生はまた少し、明るく輝きます。

ストレイト・ストーリー


★The Straight story ストレイト・ストーリー。

 「ストレイト・ストーリー」の「ストレイト」とは、アルヴィン・ストレイトの姓。ストレイトさんの物語です。弟のアルヴィンが兄に会いに行くまでを描いたストーリーなので、そのものずばりのタイトルです。
 
 他には兄の家までまっすぐに伸びている一直線の道、それをアルヴィンがまっすぐに進んでいくことを指してもいます。そして、アルヴィンの性格。

 Straight には誠実な・正直な、真面目な、という意味もあります。アルヴィンのまっすぐで、頑固なまでの性格は出会う人々の心に響くものがありました。どんなに心配されても、自力で会いに行くことにこだわるアルヴィン。

 皆がアルヴィンに感銘を受けた理由は3つ。ひとつは、アルヴィンが兄にトラクターで何日もかけて会いに行く、というその姿そのもの。そして、2つ目は、アルヴィンの兄に対する誠実さや愛情。最後に、今までの人生に裏打ちされた率直な生き方に心打たれたからです。

 彼の正直で包み隠さない性格は、彼の人生そのもの。彼の生きて来た人生がどんなものであったのか、この長い6週間の旅は伝えてくれます。彼のちょっと頑固だけど、実直で、正直な生き方は、何度見ても変わらない優しさと強さを「ストレイト・ストーリー」を見る者に与えてくれるのです。

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