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ホワット・ライズ・ビニース

映画:ホワット・ライズ・ビニース あらすじ
※レビュー部分はネタバレあり

 「フォレスト・ガンプ」を撮ったゼメキス監督のホラー・サスペンス。ハリソン・フォードとミシェル・ファイファーが湖畔の一軒家に引っ越してきた数学者の大学教授ノーマンとその妻クレアを演じる。仲むつまじく見える夫婦の仮面の下に何が隠されているのか… ?

 『解説とレビュー』ではノーマン・クレア夫婦の隣に住む夫婦の謎を通して、それぞれの夫婦の選択、そして「ホワット・ライズ・ビニース」全体を解説していきます。

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 クレアとノーマンは仲むつまじい夫婦だった。2人は数学者の夫ノーマンが父親から相続した湖のほとりに建つ家に越して来たばかりだ。娘は大学に進学して家を出て行ってしまい、今は夫婦だけ。妻のクレアは、夫が仕事に行ってしまう昼間は暇を持て余していた。

 越してきて間もなくある日、クレアは家で次々に起こる奇妙な出来事に気がつく。ドアが勝手に開いたり、ラジオやテレビの音が流れ出したり、水を張った浴槽の中に女性の顔を見たりするのだ。彼女は恐怖感を感じ、夫のノーマンにそれを訴えるが、ノーマンは取り合わない。

 さらに、クレアの家の隣に住む夫婦はどうも様子がおかしい。激しく口論することがたびたびで、ある日の夜には妻メアリーが家の外に飛び出してきて大声で喧嘩しているしまつだった。しかも、その後日、昼間に隣人の妻メアリーが庭に出てきて「夫が怖い」とクレアに訴えるのだった。

 クレアは思い余ってノーマンに相談するが、やはり、彼はクレアの訴えに取り合わなかった。クレアの家では一体何が起きているのか。隣家では何が起きているのか。やがて、クレアは恐ろしい秘密を知ることになる。



【映画データ】
ホワット・ライズ・ビニース
2000年・アメリカ
監督 ロバート・ゼメキス
出演 ハリソン・フォード,ミシェル・ファイファー



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映画:ホワット・ライズ・ビニース 解説とレビュー
※以下、ネタバレあり

★「ホワット・ライズ・ビニース」のラスト

 結末は単純でした。クレアは生き残り、ノーマンは水死。最後にノーマンの愛人・マディソンの墓に墓参りに行くクレアの姿で、映画は終わりを迎えます。

 夫ノーマンは浮気をした挙句、相手の学生マディソンとの別れ話がもつれ、マディソンに妻クレアを殺して自殺すると脅されました。ノーマンはクレアを本当に愛していたので、不倫相手のマディソンを拒み、彼女を殺害することを決意します。

 「マディソンが自殺した」とノーマンがクレアに言っていたのはウソです。マディソンはノーマンに殺されていました。
ノーマンは彼女を浴槽に沈めて水死させました。クレアを殺そうとした方法と同様の方法で殺したのです。

 最後、車で逃げるクレアにノーマンが襲いかかります。湖に転落し、水中で夫婦は格闘。ここで水中に潜んでいたマディソンはノーマンを湖の底に引きずり込み、クレアは命からがら逃げ出しました。

 ハリソン・フォードが悪役を演じたというのは珍しいことかもしれません。

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★ノーマンの不倫相手・マディソンはどんな人?

 彼女は意思が強い、自分の主張を持った人であったようです。だからこそ、ノーマンの別れ話をきっぱりと断り、死後にもゴーストとなって執念深くノーマンを狙ったのでしょう。

 マディソンはクレアを殺すと脅したとノーマンは言っていましたが、思えば、その話もマディソンを殺したノーマンの言葉ですから、本当かどうか分かりません。

 いずれにしろ、マディソンはクレアを少なくとも二度は助けました。一度目は浴槽でノーマンに殺されそうになったとき、次は川底での最期の格闘。ゴーストになってからのマディソンには、少なくともクレアを殺そうとする意図はありませんでした。

 マディソンとしては、ノーマンに殺され、自分の死体も湖に沈められている今、誰かに自分の存在とノーマンの裏切りを知らせ、自分の死体を見つけてもらうことが必要でした。なぜ、クレアのところにマディソンは現われたのでしょうか。

 それは、もちろんノーマンがいるから。ノーマンに対する復讐がマディソンの願いです。さらに、幸せなクレアとノーマンの生活を自分の存在を知らせることで壊せるから。マディソンとしては、クレアの家庭生活を破滅させ、ノーマンの命を奪うことができれば復讐としては十分です。湖の底に沈められた自分の死体の存在を知らせるにはクレアには生きて脱出してもらう必要がありました。

マディソンは善意のゴーストとは言えませんが、クレアに対しては、害意があるゴーストとも言い難いかもしれません。

さらに、ゴーストになったマディソンが、クレアたち夫婦に近づくには何かの媒体が必要なようです。最初はクレアがマディソンの家から持ち出したマディソンの髪の毛でした。その髪の毛はノーマンによって燃やされてしまったので、マディソンは次の媒体を必要とし始めました。

 次の媒体はクレアによって湖から引き揚げられた箱に入れられたペンダントでした。クレアはそれを身につけていたので、ノーマンに殺されそうになったときにマディソンがノーマンの行為を妨害することができたのです。

 また、マディソンが桟橋付近の水中や浴槽など、水に関連した場所に現れたのは彼女が水死させられたからです。家の中で起こるホラーものではバスルームというのは定番です。『仄暗い水の底から』(2002)、そのハリウッドリメイク版『ダーク・ウォーター』(2005)でも浴室はキーになる場所でした。

 水、というものは命の源であると同時に、人間の命を場合によっては奪うからでしょうか。バスルームは人間が裸になる場所なので、その無防備さが恐怖感を煽るのかもしれません。バスルームはホラーの定番アイテムとして欠かせないようです。

ホワット・ライズ・ビニース


★隣家の夫婦は何者?

 隣人夫婦、ウォレンとメアリーは何者だったのでしょうか。彼らは映画前半に集中して登場しますが、謎の存在です。隣人夫婦が行き違っていたのは本当です。メアリーが「夫が怖い、このままだと私も…」と言っていたことも、その後、一度メアリーは家から姿を消して、また2人が仲直りしたことも。

 あの家の夫婦もクレアとノーマンの夫婦のようになっていたのではないでしょうか。つまり、夫が何らかの重大な秘密をもっていたということ、妻がそれに気がついたということ、そして、2人がその秘密を巡って対立したということです。

 ここまでは2組の夫婦は共通の要素を持っていました。違ったのは秘密を知った妻の選択でした。

 ノーマンはクレアに、マディソンと不倫し、別れ話の末にマディソンが自殺したことを告白します。しかし、クレアはここでノーマンの説明に納得しませんでした。

 この時点で、マディソンの髪の毛は既に燃やされていました。ゴーストが出現する媒介物がなくなった今、マディソンのゴーストの出現を恐れる必要はなくなっていました。クレアはあえて真実を追うという選択をしなくてもよかったのです。しかし、クレアはノーマンを疑い、マディソンの死の真相を追うという選択をします。

 では、隣人夫婦、妻のメアリーの方はどうだったでしょうか。彼女は恐らく、夫ウォレンの知ってはいけない秘密を知り、喧嘩をした末にその秘密を2人で隠し、夫のウソの言い訳を受け入れたのだと思われます。クレアは真実を追い、隣人のメアリーは夫の言い分を受け入れました。

 2人の選択は結末の違いとなって現れました。クレアは家庭を失いましたが、ウォレンとメアリーの夫婦はこれまで通り、夫婦として生活をしていくでしょう。

 しかし、その生活は砂上の楼閣ではないでしょうか。妻メアリーが夫に殺されるという恐怖感を抱き、大騒ぎしたのは事実です。そんなに妻を怯えさせる夫の秘密とは一体何だったのでしょう。夫婦で大きな秘密を隠し通すことにし、その結論を無理やり自分に納得させても、今までと全く同じ幸せが得られるとはとても思えません。それを思うと、クレアの選択は間違ってはいなかったと思います。

 この隣人夫婦の存在は恐らく、クレアに間もなく訪れる選択のときを暗示していたのでしょう。すなわち、マディソンの死の真実を追うか、夫のウソの説明を受け入れるか、クレアがどちらかを選ぶときがくる、ということです。

ホワット・ライズ・ビニース


★隣人夫婦の秘密

 隣人の夫婦、ウォレンとメアリーが隠すことに決めた秘密とは何でしょうか。

 クレアが隣家を訪ねると留守でした。さらに落ちていたのは血の付いたミュール。加えて、夜に見たのは車に何やら重そうな荷物を積む夫ウォレンの姿。どう考えても誰かが死んだとしか思えないシチュエーションです。事実、クレアはメアリーが殺されたかもしれない、と夫に訴えていました。

 でも、メアリーは生きている。後のシーンで出てきます。まさかそれがメアリーのゴーストとは思えないし、クレアとノーマンがそろって幻影を見たとも思えません。クレアとメアリーは直接対面しているので、メアリーがそっくりさんと入れ替わったとも思えない。なので、殺されたのは妻メアリーではありません。

 では誰か、ということですが、死体はウォレンの浮気相手でしょう。メアリーは家の中に隠されていた愛人の死体に気がついたのだと思われます。だから、あんなに怯え、夫を恐れていたのです。「夫が怖い、このままだと私も…(浮気相手の女と同じように殺される)」、こうメアリーはクレアに言いたかったのです。

 最初のうちはメアリーとウォレンは大喧嘩をしていました。メアリーは怒りのあまり家の外に飛び出してしまうほどでした。しかし、口論をするのと怯えるというのは全く心理状態が異なります。ウォレンとメアリーが口論をしていたのは夫の浮気にメアリーが気がついたからです。メアリーは夫をなじり、浮気に対して激怒しました。そのとき、夫ウォレンは浮気相手と別れる、とでも言ったのでしょう。

 メアリーと仲直りしたウォレンはこう考えます。浮気がばれた今、浮気相手はやっとの思いで修復した夫婦関係を邪魔するものだ、と。そして、浮気相手を殺害しました。妻メアリーの怒りが怯えに変わり、一時的に家を出ていったのは、夫ウォレンが浮気相手を殺してしまい、その死体を見つけたからでしょう。

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★ホワット・ライズ・ビニースの意味

 What lies beneath = 何が下にあるのか、何が隠れて存在しているのか、という意味です。

 このタイトルが意味するのは一見仲むつまじい夫婦の裏にあるもの。それは、夫の浮気、そして殺人という秘密でした。また、隠された死体のことを指してもいるでしょう。さらに、ノーマンや隣人ウォレスの表向きの顔の下にあるのは人殺しの顔。

 クレア・ノーマン夫婦にも隣人のメアリー・ウォレン夫婦にも秘密がありました。ノーマンが浮気相手を殺害したように、隣人ウォレンも浮気相手を殺しました。この夫たちは共に大学教授で、ノーマンが大学で聞き込んできたウォレンの評判は虫も殺せないような人というもの。ノーマンだって、優秀な数学者で温厚な性格に見え、とても人殺しには思えません。

 一見平凡な夫婦に見える2組の夫婦。クレア・ノーマン夫婦だけでなく隣人夫婦の存在があることで、この物語はより一般化された意味合いをもつようになります。クレア・ノーマン夫婦の選択とメアリー・ウォレン夫婦の選択。信頼していた人の恐ろしい秘密を知ってしまったときにあなたならどちらの選択をしますか。

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★どうでしたか。

 映画全体として、秘密と恐怖が混じり合って醸し出す不気味さが全体を包む良作です。結末は手堅くまとめられていました。きちんと怖いところは怖かったし、前半のクレアとノーマンの幸せそうな夫婦が一転、ノーマンの抱える秘密を巡って殺し合ってしまうその落差も十分に描かれていました。

 惜しむらくは、ノーマンとクレアの過去がよく分からないということです。現在のノーマンはクレアとこんなにも仲が良いのに、なぜ、マディソンに走ってしまった時期があったのか。ノーマンの心情という点では、表現不足でした。それに、いくらマディソンが邪魔になったと言っても、殺害するに至るほどの切迫感が足りない気がします。

 また、クレアは自分が自殺未遂したことを忘れていて、次第に自殺未遂の記憶を取り戻していくわけですが、埋もれていた過去の記憶がよみがえってくるクレアの恐怖感や、圧迫感、驚きなどが感じられない展開でした。

 自分が自殺未遂をしたこと、そして、自殺未遂の原因は夫の浮気にあったということ。この2つの衝撃的な過去の事実をあっさりクレアが受け入れているように見えてしまっています。

 別に泣き叫んでほしいわけではありませんが、自分が自殺しかかっていたことを忘れてしまっていたなんて、かなりショッキングな出来事じゃないでしょうか。クレアが無理やり忘れようとしていた過去の辛い思い出をもっとしつこく盛り込んでも良かったと思います。

 また、マディソンが自殺したという夫の説明を受け入れるかどうかはクレアとノーマン夫婦の運命の分岐点でした。ここは夫の殺人を隠すことにした隣人夫婦との対比という意味でも、最も重要な選択をする場面だったわけです。が、その部分も引っかかりがなく淡々と進行してしまっていたので、惜しい部分です。

 さらっとした感情描写は自然ですんなり受け入れられてしまいやすいだけに、見せるべき重要なシーンは観客にここを見るべき、ということが分かるようにスローダウンして進行しないと、観客は気に止めることなく、スルーしてしまいます。

こうしてみてくると、ホワット・ライズ・ビニースは前半部分の展開が重すぎました。前半で隣人の妻、メアリーが恐怖にかられて必死でクレアに助けを求めてくる場面はかなりのインパクトがありました。その影響もあってか、夫のノーマンがかすんでしまっています。

 後半に一気に畳みかける展開を狙ったつもりだったのでしょうか。

 後半部分は、隣人夫婦が関心の対象の前半とは一転、クレアとノーマンの夫婦にスポットライトが当てられる展開です。ここがいってみればホワット・ライズ・ビニースのキモなので、後半は粘りのある丁寧な展開が欲しかったところです。

ホワット・ライズ・ビニースのユニークなところは隣人夫婦とクレア・ノーマン夫婦の対照的な選択を描いたことでしょう。隣人がいるかいないかではかなり映画への評価が変わります。この描写があることで、平凡すぎるサスペンスの線はどうにか脱しているのではないでしょうか。

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