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アリス・イン・ワンダーランド

映画: アリス・イン・ワンダーランド あらすじ
※レビュー部分はネタバレあり

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 アリスが不思議の国で経験した”2回目の”冒険を描く『アリス・イン・ワンダーランド』。『シザー・ハンズ』以来、もはやお馴染みとなった俳優ジョニー・デップと監督ティム・バートンのコンビが再び魅力的なファンタジーの世界へと観客を連れ出してくれる。奇妙で不思議、カラフルなアリスのワンダーランドをユーモアたっぷりに描き出す。

 幼かったアリスは成長し、美しい娘に成長していた。母は年頃のアリスを結婚させようとパーティに連れていくが、婚約相手と目される男性にアリスの心はなびかない。そんなアリスの前を横切ったのはチョッキを着た白ウサギ。アリスはウサギに導かれるようにして走りだす。

 アリスが訪れたワンダーランドは赤の女王が恐怖で支配する暗黒の世界だった。アリスはそこでイカれた帽子屋マッドハッター、消えるチェシャ猫、ちぐはぐな双子の兄弟など、愉快で奇妙な人々に出会う。芋虫の賢者アブソレムに引きあわされたアリスは自分が預言書の中でワンダーランドの救世主とされていることを知る。一方、アリスがワンダーランドに現れたことを知った赤の女王はアリスを捕えようと追手を放つのだった。



【映画データ】
2010年・アメリカ
監督:ティム・バートン
出演:ジョニー・デップ,ミア・ワシコウスカ,ヘレナ・ボナム=カーター,アン・ハサウェイ



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マッドハッター                     白うさぎ

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アリス                         チェシャ猫

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赤の女王(イラスベス)                  白の女王(ミラーナ)

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三日月うさぎ                      ヤマネ(マリアムキン)

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双子の兄弟、トウィ―ドルダムとトウィードルディー


映画:アリス・イン・ワンダーランド 解説とレビュー
※以下、ネタバレあり

★アリスの自立

 居並ぶ賓客たちの前でスカートをまくりあげ、足をのぞかせてマッドハッターの「自由の舞」を踊ったアリス。客たちはアリスの“はしたない“振舞いに唖然としていました。ワンダーランドから帰ってきたアリスはかつてのアリスではありません。アリスの迷える心は完全に晴れ、アリスの人生は180度変わったのです。「自由の舞」はアリスの決意を示す象徴的な行為でした。

 芋虫の賢者アブソレムに「本物のアリスじゃない」と言われ、「ごめんなさい、本物のアリスではないなんて」と謝っていたアリス。その彼女が確かに自分自身の足で歩み始めた人生の道。最初の一歩を祝福するように、旅立つアリスの肩に青い蝶が一瞬止まります。「こんにちは、アブソレム」。高く舞い上がっていく蝶を追いかけるようにしてアリスの目線が青空の高みに向けられていきました。アリスの自立です。

 2度目の”ワンダーランドの冒険でアリスが得たものとは何だったのでしょうか。そこに『アリス・イン・ワンダーランド』を読み解くカギがあるようです。

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★アリスの決断―ワンダーランドにて―

 アリスはハーミッシュ伯爵との結婚という”普通の幸せ”を望みませんでした。ワンダーランドに行った彼女は何度も選択を迫られ、そのたびに自分の決断を下してきました。この経験を経たアリスはすっかり変わったのです。決めるということは本当に難しいことです。どちらの選択が自分にとって正しいのか、それはやってみないと分からないからです。

 間違った選択をしたときの自分を考えたくはありません。また、どちらの選択をすべきか分かっていてもできないことがあります。それはまさに、「救世主」として白の女王を助けることを求められたアリスでした。アリスはジャバウォックと対決し、赤の女王との決戦に勝たねばならないことが分かっていながら、ジャバウォックとの対決を避けようとします。アリスは自分が預言された「救世主」であることすら否定し、このワンダーランドの世界は実在しない架空の世界であると考えました。

 頬をつねっても醒めない夢―そんなアリスが変わり始めるのはマッドハッターが囚われの身となってからです。赤の女王の城へと向かう決断をしたのはアリス自身でした。犬のベイヤードはアリスがマッドハッターを救いに行くという預言はない、とアリスを止めますが、アリスはききません。これはアリスが自分で下した初めての決断でした。

 アリスに対し、「君は誰だ?」と聞く芋虫の賢者アブソレム。「私は本物のアリスよ」。アリスは救世主として名乗り出る決断をし、そして、ジャバウォックとの対決後には元の世界に帰る決断をします。アリスは次々と決断を下して、運命を切り開いていきました。

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★赤の女王

 決断を下すだけなら赤の女王の決断は素晴らしく早く、そして簡潔です。しかし、彼女の決断は常に自己の利益のためだけのものでした。

 この点において、赤の女王の決断はアリスの決断とは対照的です。自分の利益だけを考えるなら、アリスは危険を冒してマッドハッターを助けに赤の女王の城へ行く必要はないし、ジャバウォックを倒すための剣を奪う必要もなく、救世主として命をかけてジャバウォックと戦う必要もないでしょう。

 しかし、アリスは常に自分のためだけではなく、他人のためをも考えて決断を下していました。一方、赤の女王は常に自分のためにだけ決断を下し、他人に“ムダな“愛情をかけることはありません。赤の女王が信頼していたのは愛ではなく「恐怖」なのです。

 「恐怖より愛が勝るかと」と進言するハートのジャックに対して、赤の女王は愛情を抱いてはいますが、そのジャックにしても赤の女王の期待に沿えなければ命は保証の限りではありません。例え、赤の女王がハートのジャックとの愛さえあればいい、そう思っていたにしても、赤の女王の人々に対する情け容赦ない扱いを見ていれば、赤の女王の愛情を信頼しきることには難しいものがあります。

 実際、白の女王に王位を譲り、他国に追放されるときになって、赤の女王とハートのジャックの間には真の信頼関係など存在しなかったことが明らかになりました。赤の女王はジャックとの間には愛情に基づいた関係があると思っていたかもしれませんが、赤の女王の振舞いを見ていたジャックにとっては女王との関係はその他の人々と同じく、恐怖が支配する関係に過ぎなかったのです。

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★アリスの決断―今、何をすべきか―

 「ママ、私は自分を見つけたわ」。アリスは父のしていた貿易ビジネスに携わることを決意します。アリスの父は先見の明のある有能な人でした。今は亡き父のようにビジネスにチャレンジしてみたいとアリスは思ったのです。

 人の生き方にはいろいろな道があるでしょう。アリスが捨てた「結婚」という選択肢もあれば、アリスの選んだ「仕事」という選択肢もあります。人がこの世界で生きていくには何かしら、自己実現のできる道が必要です。せっかく、この世に生まれたのだから、胸を張って、自分が生きたと言える足跡を残したい。

 選んだ道が間違っていたとき、何か落ち着かない感じがして、無性にいらいらしてしまうでしょう。アリスも上流社会の令嬢として、それにふさわしい服装や振舞い、そして結婚を求められたときにその感覚を味わっていました。何か、違う、でもどうしたらいいのか分からない。私が今、本当にするべきことは何なのか。

 幼いアリスはワンダーランドで素晴らしい経験をして元の世界に戻ってきました。それから10年以上が過ぎ、成長したアリスは生きる道を見失っていました。地位も財産もある(けれど胃腸が弱い!)ハーミッシュ伯爵と結婚するという人生が本当に素晴らしいものなのか。

 周囲の人々はそれが良いと思っているようだけれど、アリスには割り切れない思いが残っていました。それで彼女はハーミッシュ伯爵の前から逃げ出し、白ウサギを追ってかつて訪れたワンダーランドへと再び導かれたのです。

 長い人生の中で、人は決断を迫られる場面に遭遇します。その時に、周囲に流されず、自分の進むべき道を見つけることができるかどうか。アリスは今回、ビジネスという選択肢を選びました。しかし、この決断は全てではありません。今、現在のアリスにとっては、ビジネスという選択肢がベストであったということ。アリスにも、いずれ結婚という選択肢が見えてくるときがくるでしょう。

 決断をするときには、長い人生を見渡して長期的視野に立ち、決断すべきときもあるでしょうし、短期的な利益が優先する場合もあるでしょうが、いずれの場合にも、その時の"自分"を把握できていなくては良い決断はできません。

 自分自身を分析し、自身の能力や力に気が付くことができるかどうか。決まり切ったことをただ繰り返しているだけの毎日では、つい自分の能力の限界を低く設定してしまいがちです。リスクを取らない無難な人生は時として退屈すぎる人生になってはいないでしょうか。

 ワンダーランドに行ったアリスが勇敢な決断を下せず、受身の行動を取り続けていたなら、アリスは叔母のようになっていたかもしれません。「フィアンセを待っているの」と言う叔母は、いつか白馬の王子様が現われるという妄想を抱いていました。叔母にとってのワンダーランドはもはや妄想の世界です。なぜなら、彼女はただ待っているだけだから。叔母は自らのワンダーランドで自ら行動を起こすことはありません。

 アリスの生きる時代、女性は結婚して家庭に入ることが幸せとされていました。その既定路線から外れる道を選んだアリスのように、自分自身に正直になって今の自分にベストな選択をすること―そしてリスクを取ること―は簡単ではありませんが、目的が達せられたときに得られる喜びには大きいものがあるでしょう。

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★ワンダーランドは夢か現実か

 アリスは最初、ワンダーランドは夢でしかない、目が醒めれば消えてなくなる幻想の世界だと思っていました。これは半分合っています。一方で、「ワンダーランドは実在する」とマッドハッターに言いきったアリスも真実です。

 ハーミッシュの母と散歩しているときに2人の目の前を横切った白ウサギを見つけることができたのはアリスだけでした。ワンダーランドはアリスにだけ開かれたアリスのためだけの不思議な世界です。そして、ワンダーランドはアリスの迷える心が生み出した世界。アリスがハーミッシュとの結婚を迷っていなければ、白ウサギに導かれてワンダーランドに行くことはなかったでしょう。

 アリスはマッドハッターに「ワンダーランドを忘れるわけがない」と言いました。アリスは救世主としてワンダーランドを救いましたが、それはすなわち、自分の人生を救いだすための闘いでもありました。アリスはワンダーランドの救世主であり、かつ、自分自身の人生に対しても救世主として活躍したのです。

 アリスは変わりました。アリスを変えてくれたのはワンダーランド、そしてその世界の住人たちです。その彼らを忘れることなどアリスにできるわけがありません。アリスの創り出したワンダーランドはアリスの心の中にのみ、存在し続けます。そして、この先、またアリスが道に迷ったときは再びアリスのワンダーランドが新しいストーリーを用意して彼女を迎えてくれることでしょう。

 さて、アリス以外の人間はワンダーランドに行けないのかといえばそうではありません。私たち一人一人が心の中に自分だけのワンダーランドを持っています。そこには自分の知らなかった世界が広がっていて、自分だけが経験できる素晴らしい体験が待っています。

 ワンダーランドでは私たち一人一人が“救世主”です。今までその存在に気がつかなかったとしても、アリス・イン・ワンダーランドを観ることで自分の中にあるはずの自分だけの”ワンダーランド”を疑似体験できるのかもしれません。

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Copyrights of All images in this article belong to Walt Disney Pictures.

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